地域とタンチョウのつながり
~タンチョウレスキューの現場から

 

地域とタンチョウのつながり
~タンチョウレスキューの現場から


講座概要

 

 本講座は、2021年1月に実施したオンライン講座に引き続き、釧路市動物園で行われているタンチョウレスキューの取り組みに焦点をあてて開催したものです。今回のテーマは生きた体験。実際に見聞きする様々な情報から、私たちができることをみつめていただく機会になればと願って実施しました。

 地域の人々と国の政策による保護活動によって個体数を回復してきたタンチョウですが、より人に近い場所で暮らすようになったことで、「事故」の増加や、様々な人とのあつれきが生まれています。
 講座では、現在のタンチョウをとりまく現状や、動物園への保護収容の原因、タンチョウの命をつなぐ現場で行われている様々な取組みをご紹介いただきました。
 バックヤードツアーでは、長期療養施設や入院舎、タンチョウ動物病院などの施設をご案内いただくとともに、様々な手作りの治療器具についてもお話を交えてご紹介いただきました。また、今回の講座では、生息域外保全の取り組みについてもご紹介いただき、飼育下繁殖個体のケージもご案内いただきました。


 

 

 
開催日 2021年7月16日(金)
参加者 9名
講 師 飯間 裕子さん
      (釧路市動物園ツル担当獣医師)
主 催 ・湿原学習のための学校支援
     ワーキンググループ事務局
    (環境省釧路自然環境事務所)
    ・釧路教育研究センター
 
 
 
本サイトでは、以下の動画を掲載しています。
講座内で視聴した動画
施設や治療道具の紹介【事前に収録】

飼育下繁殖個体の解説
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

講座概要

 

 本講座は、2021年1月に実施したオンライン講座に引き続き、釧路市動物園で行われているタンチョウレスキューの取り組みに焦点をあてて開催したものです。今回のテーマは生きた体験。実際に見聞きする様々な情報から、私たちができることをみつめていただく機会になればと願って実施しました。

 地域の人々と国の政策による保護活動によって個体数を回復してきたタンチョウですが、より人に近い場所で暮らすようになったことで、「事故」の増加や、様々な人とのあつれきが生まれています。
 講座では、現在のタンチョウをとりまく現状や、動物園への保護収容の原因、タンチョウの命をつなぐ現場で行われている様々な取組みをご紹介いただきました。
 バックヤードツアーでは、長期療養施設や入院舎、タンチョウ動物病院などの施設をご案内いただくとともに、様々な手作りの治療器具についてもお話を交えてご紹介いただきました。また、今回の講座では、生息域外保全の取り組みについてもご紹介いただき、飼育下繁殖個体のケージもご案内いただきました。


 

 

 
開催日 2021年7月16日(金)
参加者 9名
講 師 飯間 裕子さん
      (釧路市動物園ツル担当獣医師)
主 催 ・湿原学習のための学校支援
     ワーキンググループ事務局
    (環境省釧路自然環境事務所)
    ・釧路教育研究センター
 
 
本サイトでは、以下の動画を掲載しています。
講座内で視聴した動画
施設や治療道具の紹介【事前に収録】

飼育下繁殖個体の解説
 

 

講座内で視聴した動画

電線とタンチョウ(飛去・飛来)

 

タンチョウが電線を飛び越えて飛ぶ様子。飛んでいるタンチョウが電線に衝突する事故が起こります。電線に付けてある黄色いマーカーは、電線を目立たせてタンチョウがぶつからないように電力会社さんがつけてくれている衝突防止用のマーカーです。

 

 

道路を横断するタンチョウ

 

タンチョウは車が近づいてきてもカラスのようには飛んで逃げず、歩いて移動します。こうした認識をなかなか持ちづらいことが交通事故が増えている原因と考えられます。道路にタンチョウがいるのを見つけたら、車のスピードを落としてくださいね。

 

講座内で視聴した動画

電線とタンチョウ(飛去・飛来)

 

タンチョウが電線を飛び越えて飛ぶ様子。飛んでいるタンチョウが電線に衝突する事故が起こります。電線に付けてある黄色いマーカーは、電線を目立たせてタンチョウがぶつからないように電力会社さんがつけてくれている衝突防止用のマーカーです。

 

 

道路を横断するタンチョウ

 

タンチョウは車が近づいてきてもカラスのようには飛んで逃げず、歩いて移動します。こうした認識をなかなか持ちづらいことが交通事故が増えている原因と考えられます。道路にタンチョウがいるのを見つけたら、車のスピードを落としてくださいね。

 

スラリー転落からの救出

 

ここ10年程でとても増えてきている事故で、牛のふん尿を処理するため池のような施設に落ちてしまうと脱出することができません。骨折などの大きな怪我を負うことが少なく、救助ができれば、高い野生復帰率を誇る事故です。

 

 経口補液・強制給餌

 

保護されるタンチョウは痩せて状態が悪い場合がほとんどで、そんなタンチョウには、食道に管を入れて水分を補給したり、栄養満点のツル団子を食べさせます。

 

スラリー転落からの救出

 

ここ10年程でとても増えてきている事故で、牛のふん尿を処理するため池のような施設に落ちてしまうと脱出することができません。骨折などの大きな怪我を負うことが少なく、救助ができれば、高い野生復帰率を誇る事故です。

 

 経口補液・強制給餌

 

保護されるタンチョウは痩せて状態が悪い場合がほとんどで、そんなタンチョウには、食道に管を入れて水分を補給したり、栄養満点のツル団子を食べさせます。

 

リハビリするタンチョウ

 

なるべく早く義足を付けて立たせてあげて、歩かせてあげることが大事になります。なるべく歩きたいという欲求が残っているうちに、筋力が落ちて歩けなくなる前に、リハビリを始めてあげるということが大切です。

 

ヒナの放鳥

 

2017年7月、ケガをして保護されたヒナを4日後に親鳥に戻した瞬間の動画です。タンチョウは子煩悩で、保護されて1週間以内であれば親鳥に戻せる可能性があります。やむをえずヒナを保護する時は、必ず保護した場所を記録して下さい。

 

リハビリするタンチョウ

 

なるべく早く義足を付けて立たせてあげて、歩かせてあげることが大事になります。なるべく歩きたいという欲求が残っているうちに、筋力が落ちて歩けなくなる前に、リハビリを始めてあげるということが大切です。

 

ヒナの放鳥

 

2017年7月、ケガをして保護されたヒナを4日後に親鳥に戻した瞬間の動画です。タンチョウは子煩悩で、保護されて1週間以内であれば親鳥に戻せる可能性があります。やむをえずヒナを保護する時は、必ず保護した場所を記録して下さい。

 

施設や治療道具の紹介
【オンライン講座開催時に事前に収録】

ツル舎(長期療養施設)

 

義足のタンチョウや長期療養が必要なツル達が暮らす施設です。釧路市動物園で最初に公開を始めた義足のタンチョウ、モモ。皆さんにモモの姿を見ていただくことでタンチョウの現状を知ってもらうきっかけになればと考えて一般公開を始めました。

 

 
 

越冬舎(入院舎)

 

最初にツル達が運ばれてきて集中的に治療が必要なツルが過ごす施設です。1.8m四方のケージはツルにとってジャストサイズで、翼を広げると2.5mにもなるタンチョウは、この広さのケージだと飛び上がって逃げようとしません。

 

施設や治療道具の紹介
【オンライン講座開催時に事前に収録】

ツル舎(長期療養施設)

 

義足のタンチョウや長期療養が必要なツル達が暮らす施設です。釧路市動物園で最初に公開を始めた義足のタンチョウ、モモ。皆さんにモモの姿を見ていただくことでタンチョウの現状を知ってもらうきっかけになればと考えて一般公開を始めました。

 

 
 

越冬舎(入院舎)

 

最初にツル達が運ばれてきて集中的に治療が必要なツルが過ごす施設です。1.8m四方のケージはツルにとってジャストサイズで、翼を広げると2.5mにもなるタンチョウは、この広さのケージだと飛び上がって逃げようとしません。

 

治療道具(ジャケットとマスク)

 

タンチョウを治療したりハンドリングするための手作りの道具で、お互いに怪我をしないように、より便利に治療が進められるようにするために、色々な道具を自分たちで考えて作り、改良を重ねています。


 

治療道具(義足)

 

残っている足の長さ・形はそれぞれの個体で違うため、個体毎に足の型をとり、ぴったり合う義足を手作りで制作しています。手作り感満載ですが、型を取ってから急げば翌日には義足を付けてあげることができます。義足の材料は、歯医者さんが入れ歯を作る時に使う材料などを使っています。

 

治療道具(ジャケットとマスク)

 

タンチョウを治療したりハンドリングするための手作りの道具で、お互いに怪我をしないように、より便利に治療が進められるようにするために、色々な道具を自分たちで考えて作り、改良を重ねています。


 

治療道具(義足)

 

残っている足の長さ・形はそれぞれの個体で違うため、個体毎に足の型をとり、ぴったり合う義足を手作りで制作しています。手作り感満載ですが、型を取ってから急げば翌日には義足を付けてあげることができます。義足の材料は、歯医者さんが入れ歯を作る時に使う材料などを使っています。

 

治療道具(ハンモック 褥瘡防止パッド)

 

ハンモックはホームセンターで売っているイレクターという材料を使って制作しています。床ずれを予防するための褥瘡(じょくそう)防止パッド、ヒナ用ハンモックなども全て手作りで、100円均一ショップで売っている材料などから制作しています。

 

動物病院と冷凍庫

 

込み入った治療や手術をする時に、動物病院で処置を行います。死んで収容された多くのタンチョウ達もこの施設で病理解剖を行い、死亡原因や基礎的なデータを記録として残しています。こうしたデータ、標本を今後の研究、保護活動に活かしていくことがすごく大切になっていきます。

 

治療道具(ハンモック 褥瘡防止パッド)

 

ハンモックはホームセンターで売っているイレクターという材料を使って制作しています。床ずれを予防するための褥瘡(じょくそう)防止パッド、ヒナ用ハンモックなども全て手作りで、100円均一ショップで売っている材料などから制作しています。

 

動物病院と冷凍庫

 

込み入った治療や手術をする時に、動物病院で処置を行います。死んで収容された多くのタンチョウ達もこの施設で病理解剖を行い、死亡原因や基礎的なデータを記録として残しています。こうしたデータ、標本を今後の研究、保護活動に活かしていくことがすごく大切になっていきます。

 

飼育下繁殖個体の解説

019とエムタツ

 

雄が019、雌がエムタツのペアです。019は丹頂鶴自然公園で生まれた個体で、放鳥5年後に怪我をして保護されました。右の翼が少し歪んでいて飛べないので、なかなか交尾が上手くいきません。019は釧路市動物園にとって貴重な個体で、飼育下繁殖群の5代目で、019の子どもが出来れば、次の世代につなげることができ、色々な工夫をしながら繁殖を試みています。

 

 

コウとアミ

 

雄がコウ、雌がアミのペアで、どちらも野生から保護されたきた個体です。どちらも5歳程の歳で、2年ぐらい前にペアリングに成功しました。今年初めて卵を産み、無精卵で繁殖は上手くいきませんでしたが、野生同士の新しいペアになるので、新しい血統の導入ということになり、何とか上手く繁殖してもらえたらと思っています。

 

飼育下繁殖個体の解説

019とエムタツ

 

雄が019、雌がエムタツのペアです。019は丹頂鶴自然公園で生まれた個体で、放鳥5年後に怪我をして保護されました。右の翼が少し歪んでいて飛べないので、なかなか交尾が上手くいきません。019は釧路市動物園にとって貴重な個体で、飼育下繁殖群の5代目で、019の子どもが出来れば、次の世代につなげることができ、色々な工夫をしながら繁殖を試みています。

 

 

コウとアミ

 

雄がコウ、雌がアミのペアで、どちらも野生から保護されたきた個体です。どちらも5歳程の歳で、2年ぐらい前にペアリングに成功しました。今年初めて卵を産み、無精卵で繁殖は上手くいきませんでしたが、野生同士の新しいペアになるので、新しい血統の導入ということになり、何とか上手く繁殖してもらえたらと思っています。

 

マリ

 

1976年生まれの45歳で、おそらく国内で最高齢の個体です。隣のケージに他のペアがいますが、歳をとっても縄張り意識は強く、常に睨みを利かせています。今は夏なのでバックヤードにいますが、冬の間はちょっと寒さが厳しいので、先ほど見たツル舎の方に移動させ、暖房の効いた所で越冬してもらっています。
 
 

 

 旧ケージと偽卵のお話

 

飼育下繁殖群を維持するために様々な工夫をしています。カラスなどに卵を取られたりするのを防ぐために、親鳥には偽卵を抱いてもらい、卵は孵卵器という人工的に温める機械に入れておいて、孵化直前になったらまた交換します。偽卵と交換することで、例えば、2個の有精卵を産んだペアがいた場合に、無精卵を産んだペアや子育てを全く経験したことのないペアに卵の1個を預けたり、毎年子育てしているペアを休ませてあげるなど、色々なパターンで工夫が出来るようになります。

 

マリ

 

1976年生まれの45歳で、おそらく国内で最高齢の個体です。隣のケージに他のペアがいますが、歳をとっても縄張り意識は強く、常に睨みを利かせています。今は夏なのでバックヤードにいますが、冬の間はちょっと寒さが厳しいので、先ほど見たツル舎の方に移動させ、暖房の効いた所で越冬してもらっています。

 

 旧ケージと偽卵のお話

 

飼育下繁殖群を維持するために様々な工夫をしています。カラスなどに卵を取られたりするのを防ぐために、親鳥には偽卵を抱いてもらい、卵は孵卵器という人工的に温める機械に入れておいて、孵化直前になったらまた交換します。偽卵と交換することで、例えば、2個の有精卵を産んだペアがいた場合に、無精卵を産んだペアや子育てを全く経験したことのないペアに卵の1個を預けたり、毎年子育てしているペアを休ませてあげるなど、色々なパターンで工夫が出来るようになります。