ウチダザリガニ(甲殻類)
  現在、日本には3種類のザリガニが分布しています。昔から日本に生息している在来種のニホンザリガニ、ペットショップなどでよく見かける北米産の外来種ア メリカザリガニ、そして日本各地で問題になり、外来生物法によって特定外来生物に指定されている北米産のウチダザリガニです。
 ニホンザリガニは、主に周囲を豊富な広葉樹林に囲まれた、ゆるやかな流れの河川などで見ることができ、北海道の全域に分布しています。しかし、現在は生 息数や生息環境が急速に失われつつあります。その原因の一つが特定外来生物ウチダザリガニの侵入です。ニホンザリガニとアメリカザリガニの分布域は生息環 境の違いから重なることはほとんどありません。しかし、ニホンザリガニとウチダザリガニの分布域は重複してしまうのです。ニホンザリガニの大きさは5cm 程度であるのに対し、ウチダザリガニは倍以上もある15cm程度まで大きくなります。そんな2種が同じ場所にいた場合、当然大きいウチダザリガニがニホン ザリガニを駆逐してしまいます。さらに、ウチダザリガニは、ニホンザリガニと比べ成熟までの年数が短く、しかも多くの卵を産みます。その結果、ウチダザリ ガニはニホンザリガニの住み処を奪い、どんどんと分布域を拡げています。
ウチダザリガニによる生態系への悪影響は、ニホンザリガニとの競合だけではなく、その他の水生生物への被害も深刻です。近年では、天然記念物であるマリモ で有名な阿寒湖では、貴重なマリモを食べたり、穴をあけて隠れ処にしたりしていることが明らかになりました。また、釧路市の春採湖ではウチダザリガニによ る食害の影響で魚類の産卵場所や水鳥の餌となる水草が激減していると考えられています。このような状況を打開するため、現在は日本各地で生態調査や駆除作 業が盛んに行われています。
そんなウチダザリガニは一体どんなものを食べているのでしょうか?一般的にザリガニは雑食性で、魚類や底生生物、水草など水中の動植物のほとんどが餌にな ります。同じ場所にいればニホンザリガニも食べてしまいます。そんなウチダザリガニの天敵としては、イトウなどの大型の魚類やアオサギやタンチョウなどの 鳥類が挙げられます。また、同じ特定外来生物であるアメリカミンクによっても食べられるという、ちょっと変わった状況も生じています。
(解説:NPO法人 環境把握推進ネットワーク−PEG 代表 照井滋晴さん )